<水野金一郎教授・石原英子教授定年ご退職記念特集>水野金一郎教授の定年ご退職によせて
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概要
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新たな2000年を少しばかり華やいだ気持ちで迎えたのも束の間,水野金一郎教授が平成12年3月に定年ご退職されてから早や1年となります。水野先生をはじめてお見かけしたのは,私が新米の助産婦として名古屋市立大学病院の産婦人科病棟で勤務し始めた頃だったと思います。先生は夜でも朝でも,緊急手術がある時や当直医が困惑している時には,いつでも駆けつけていらっしゃいました。昼間は外来もお忙しく務めておられ,いつお休みになっているのだろうと思ったことを覚えています。間も無くして,先生は医学部産婦人科助教授に就任されました。当時は,大学の助教授というととても近寄りがたい存在でありましたが,水野先生はそのお見かけどおり真面目一徹な一方で,温厚で優しく面倒見のよいお人柄でしたので,患者さんをはじめ,誰からも慕われていました。こうして振り返ってみますと,私自身はこの任に相応しいのかどうか大変僭越と思いますが,今日までの先生より頂いたご指導に感謝の意を込めて,先生のご略歴やこれまでのご研究の概要などを,ご紹介したいと思います。先生は昭和34年3月に名古屋市立大学医学部をご卒業され,名古屋市立大学医学部産婦人科教室研究員,名鉄病院産婦人科で医師として,臨床に,研究に多くの研鑚を積まれ,昭和41年10月には本学医学部産婦人科の助手に就任されました。そして同講師を経て,昭和48年6月に本学医学部産婦人科助教授に就任されました。研究,教育,診療と多忙な中で,先生の指導のもとに巣立っていかれた先生方も多くいらっしゃいます。昭和63年4月に名古屋市立大学看護学校と名古屋市立看護専門学校の統廃合に伴い,名古屋市立大学に看護短期大学部が併設され,先生は同看護短期大学部教授並びに初代の部長としてご着任されました。平成3年4月には専攻科助産学専攻の開設にも力をそそがれ,教育そして同看護短期大学部の礎を築くことに専心されました。さらに平成8年から平成10年3月までの2年間,再度,同看護短期大学部長に就任されましたが,この期間は本学看護学部の設立準備期であり,その教員選考専門部会長として非常に困難を極めた人材の確保に献身的にご尽力されました。そして平成11年4月看護学部開設時に教授に就任されました。先生のこれまでの,本学医学部,看護短期大学部および看護学部の教育,研究,また大学運営における功績に対して,看護学部として初めての本学名誉教授の称号を受けられたことは記憶に新しいところと存じます。学術活動としては,日本産科婦人科学会,日本不妊学会,日本母性衛生学会,日本臨床免疫学会,日本癌治療学会,日本新生児学会など多くの学会に所属され,学会発表および原著論文を多数発表しておられます。また嘱望されて,日本産科婦人科学会評議員,日本不妊学会評議員,愛知県助産婦教育協議会会長,日本母性衛生学会理事,全国助産婦教育協議会理事を勤められ,このうちのいくつかは現在も役員をされています。また,平成8年5月から平成11年5月までの4年間,愛知県母性衛生学会会長として大役を果たされました。さらに現在も,日本死の臨床研究会世話人としてご活躍されるとともに,平成8年1月からは,あいちホスピス研究会副会長を務められるなど,先生はわが国における産科婦人科学全般の発展と啓蒙,患者と家族のこころのケアに多大な貢献をされてこられました。水野先生が医学部で研究・教育・診療に従事された期間は,主に,生殖内分泌領域において活躍されていました。昭和59年に当時の教授(八神喜昭名誉教授)が産婦人科マイクロサージャリー学会を開催されたときには,水野先生のプランでその頃新しく血管吻合術に応用されていたYAGレーザーを使って,簡単に卵管吻合術ができないかとの課題にとりくまれ,東京農工大家畜繁殖学の獣医のもとまで出向かれたそうです。そこで白色家兎による基礎的な実験,光学顕微鏡を用いての組織学的検討,そして走査電子顕微鏡を用いての形態学的検討などに情熱的に取り組まれ,ついには卵管吻合術をおこなった山羊から元気な産仔を得ることに成功されました。当時は初めて体外受精児が誕生したばかりの時代であり,マイクロサージャリーによる次世代の不妊症治療法のご研究は,体外受精・不妊治療法時代到来において大きな一歩であったことと思われます。先生が基礎を築かれ,後進の指導にあたられた生殖内分泌の研究は,現在では輝かしい成果を挙げつつあり,多くの難治性不妊症の患者さんに福音をもたらしていると伺いました。看護短期大学部にご着任されてからは,それまで温めてこられた「生命倫理」「医の倫理」など倫理の方面に学問的造詣を深められ,もはや医学的には治療が不可能となった人たちへの終末期ケアを目的とした病院の視察や調査研究を意欲的にされました。
著者
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