<原著>社会学者がヘーゲルから学ぶもの
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概要
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社会学が誕生してからすでに150年以上が経過したが, 社会学はまだその創始者であるコントやスペンサーが目指した社会の全体像の提示に成功したとは言い難い状況にある。もちろん, 社会の全体像の提示ということは大変困難なことではあるが, 不可能だとは言えないであろう。この社会の全体像の提示のための手掛かりは, コントやスペンサーのみではなく, 哲学者であるヘーゲルにも存在する。ヘーゲルは思弁にふけった「哲学者」ではなく, 現実の世界を究明しその全体像を提示しようとした真の哲学者である。そして, 『歴史哲学』によって人類の歴史的発展の道程を明らかにし, 『法の哲学』によって国家と社会の論理的二重性を史上初めて説いた人物であって, 社会の考察においても一頭地を抜いた存在である。このヘーゲルの業績はマルクス主義の系列に受け継がれ, マルクス主義は社会学にも大きな影響を及ぼした。しかし, 彼らの代表者とも言えるエンゲルスが, 必ずしもヘーゲルをきちんと受け継いだとも言えないのである。これは, エンゲルスがヘーゲルを唯物論的に改作したということではない。そうではなく, 彼がヘーゲルの体系, その中核である絶対精神をあっさりと否定してしまった結果, もろもろの問題が生じたということである。したがって我々は, ヘーゲルにまでもどって彼の学を学び, それを指針として社会の全体像の提示を目指すべきである。
- 宮崎県立看護大学の論文