初級クラスにおけるネイティヴ・スピーカーの役割 : 言葉やジェスチャーの反応がないときの授業共通言語の工夫
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
西洋のネイティヴ・スピーカーが,初めて日本に来て日本語の知識もなく外国語を教える場合,日本人の口数少ない沈黙の問題に直面する。またジェスチャーや身振りなどの共通コードが欠けたり,伝統的な学校制度,教育制度や文化が異なると,教師と学習者間の意思の疎通が妨げられる。ドイツ語の場合,授業中の無口な沈黙を破る手段として,英語が適しているのではないだろうか。私の経験では,英語を使用することが,それが理解されなくても,教師と学習者の信頼を築き,ドイツ語に対する不安を取り除くことに役立つことがわかった。英語は高等学校まであるいはメディアで慣れ親しんできているからである。教師側と学習者側のさまざまな期待に関しては,学期初めに,出席や時間を守ること,共同作業や自発的に勉強すること,試験などについて予め述べておくことが有効である。黒板を十分考えて使うと,早い時期に英語を使用する必要がなくなる。例えば,黒板の右上隅には赤いチョークかコールサインで活動の指示を与え,黒板の左側には黄色のチョークか絵記号で(1人活動,パートナー活動,グループ活動などの)活動形態を示しておくとよい。ネイティヴ・スピーカーの教師が日本で意識しておかなければならないのは,ラテン文字が日本語よりも後で習得することである。特に筆記速度が遅いことや筆記形式が上手くないことについては,この事実を考慮しなければならない。学習進歩を常に評価することが教師にとっても,学習者にとっても,示唆に富む重要なことである。その際,点数が問題なのではなく,何を理解し,何を充分学んだか,その情報を提供することが肝要である。授業の一環として教師によるテストを行い,その間違った個所を学習者にパートナー活動で訂正させたり,改良させることが学習自動化への一歩となる。授業外でも自分で勉強する方法を見つけ出す手助けとなるからである。
- 金沢大学の論文