RA系と脳心腎連関
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概要
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RA系が脳・心・腎の臓器障害やメタボリックシンドローム,糖尿病の病態に重要な役割を演じていることは臨床レベルでも確立しており,その病態生理ならびに阻害薬の薬理学的機序に注目が集まっている.RA系による脳・心・腎の臓器障害の機序として,アンジオテンシンIIによる血管内皮障害や血管リモデリングが重要な役割を演じている.アンジオテンシンIIはNADPHオキシダーゼ,キサンチンオキシドリダクターゼおよびeNOSアンカップリングによる酸化ストレス増加作用,接着因子,ケモカインおよびサイトカインの発現増加を介した炎症惹起,インスリン抵抗性促進作用等の多様なメカニズムを介して,酸化ストレスと炎症の悪循環を引き起こし,血管内皮障害や血管リモデリングの成因に関与する.さらに,アンジオテンシンIIによる血管eNOSアンカップリングやeNOS機能不全は,心腎連関の進展,食塩感受性高血圧や腎機能障害にも関与している.MAPキナーゼキナーゼキナーゼであるASK1は酸化ストレスによって活性化される分子であるが,アンジオテンシンIIによって著明に活性化される.ASK1欠損マウスを用いた検討から,アンジオテンシンIIによる心血管リモデリング,肥満,インスリン抵抗性,脂肪肝の進展にASK1が重要な役割を演じている.SHRSP(脳卒中易発症高血圧ラット),慢性脳低灌流による血管性認知症マウス,アルツハイマー病モデルマウスを用いた検討から,neurovascular unitでのRA系亢進が脳卒中や認知症の病態に重要な役割を演じており,脳内RA系をブロックすることが認知症の予防戦略としても有効である可能性がある.以上の成績から,RA系による臓器障害の機序,インスリン抵抗性等の代謝性疾患の機序を解明することは循環規約の創薬につながることが期待できる.
- 2012-09-01
著者
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