統合失調症の新規ターゲット探索へのアプローチ
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概要
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統合失調症は,陽性症状・陰性症状・認知機能障害を伴う様々な症状を呈し,その顕著な症状により社会的営みが大きく阻害される.また若年での発症を認めること,そして症状の持続や増悪化など予後が悪い患者も多いことから,本人のみならず家族を始めとする取り巻く人々へも負担を強いる,社会的影響が極めて大きな疾患の一つである.統合失調症治療に関しては,現在ドパミン遮断を主作用とする定型抗精神病薬や,セロトニンその他受容体調節作用を加え発展させた非定型薬剤により,特に陽性症状への介入に一定のベネフィットが認められる.一方で,陰性症状や認知機能障害に対してはこれら薬剤による治療効果は必ずしも高くなく,大きなアンメットニーズとして認識されている.臨床においてはこのように満たされない現状ではあるが,近年では精神疾患領域における研究の飛躍的な進展により,病因・病態の観点から多面的な俯瞰が可能となってきた.遺伝学からは疾患感受性(リスク)遺伝子の同定,分子生物学・細胞生物学からはリスク遺伝子のメカニズム解析,組織学・解剖学からは病理・病態への考察,そして脳イメージングや脳波などのin vivo電気生理学アプローチにより,中間表現型(エンドフェノタイプ)と考えられる生体脳機能変化への切り込みが試みられている.このような多様なアプローチを駆使することで,統合失調症に対する新しい病態仮説の設定や創薬標的探索が模索されている.そして,現状の創薬が取り組む症状緩和を主目的とする対症療法アプローチから,次世代の創薬には病態改善を含む抜本的な切り口が求められるようになるだろう.この大きな課題に対してどのような取り組みが必要なのか,本節においては創薬標的分子の探索に主眼をおいて議論したい.
- 2012-09-01
著者
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三宅 進一
CNS, Astellas Research Institute of America LLC
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多神田 勝規
アステラス製薬株式会社 研究本部 薬理研究所 神経科学研究室
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松本 光之
CNS, Astellas Research Institute of America LLC