シナプス入力のリアルタイムイメージング
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
脳は多様な情報を柔軟に処理することで多彩な機能を発揮している.これまでに,個体レベルから単一細胞レベルに至る多くの研究がなされ,脳の機能の多様性がどう生じているのかという疑問が徐々に解消されてきた.しかし,こうした研究成果が蓄積されるとともに,従来のアプローチだけでは脳の多様性を説明することは不十分であることもわかってきた.神経回路を構成するニューロンは,互いにシナプスを介して結合することで情報を伝達している.近年,樹状突起に存在する多数のシナプスを通じて,単一のニューロンでも高度な情報処理を行うことが可能であることが示唆されている.たとえば,ニューロンは,シナプス活動の時空間パターンを非線形に積算することで,情報のフィルタリングや論理演算を行なっている.また,シナプス可塑性を通じて積極的に神経回路網を書き換えることで,より効率的に情報の多様性と安定性を実現している.したがって,シナプス活動を詳細に観察することは,ニューロンの作動原理を解明するうえで必須である.今回,我々は,機能的スパインカルシウム画像法の開発により,ニューロンの情報処理をシナプスレベルで解明することができるようになった.本稿では,同実験手技の開発に至る経緯とともに,今後の展望についてもふれる.
- 2012-07-01
著者
-
池谷 裕二
東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室
-
小林 千晃
東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室
-
池谷 裕二
東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室
-
高橋 直矢
東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室
関連論文
- 脳スライス標本を用いた多ニューロン活動のカルシウム画像化
- P1-38 熱性けいれんモデルラットの海馬におけるGABA依存的な異所性穎粒細胞の出現(病理・実験てんかん,一般演題(ポスター),第42回日本てんかん学会)
- NR-4 神経活動依存的な細胞内cAMP量上昇による海馬苔状線維の異常発芽形成(神経科学セッション関連,てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)
- N-4 海馬苔状線維の異常発芽形成における細胞内cAMP量上昇の関与(Ictogenesis and Epileptogenesis,神経科学セッション,第40回 日本てんかん学会)
- 神経ネットワーク活動の可視化 (特集 生命システムの階層間をまたぐイメージング技術)
- 脳回路システムにおける薬効評価系を目指した多ニューロン画像法
- 多ニューロン活動の可視化 (特集 学習と記憶--基礎と臨床)
- 多ニューロン活動の画像化と統計解析 (特集 神経情報処理のイメージング)
- ファーマコメタボノミクス
- 苔状線維発芽は側頭てんかんの治療ターゲットとなるか
- オリジナリティを求めて : 遡及的戦略か童心か
- 1SD53 大脳皮質の自発神経活動に潜む反復モジュール(神経回路の情報生物物理学)
- 毒を以って毒を制す : アルツハイマー病予防に新たな展開!?(F・医薬品開発, 薬理学, 臨床)
- 科学通信 科学の動向 亜鉛イオンがもたらす新しい神経情報処理システム
- パッチクランプ用記録電極の蛍光可視化
- 超高速多ニューロンカルシウム画像法
- シナプス入力のリアルタイムイメージング
- 私は薬理学者か
- 若手薬理学者が担う治療標的研究の新潮流