熱ショック蛋白質誘導剤(ゲラニルゲラニルアセトン)を用いた老人性難聴モデルマウスの難聴進行の抑制
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概要
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【背景】老人性難聴とは老化に伴う進行的不可逆的な感音難聴であり,聴力の損失は著しくquality of lifeを低下させるが治療法はいまだない.本研究では生体が持つ根幹的なストレス応答である熱ショック応答と誘導される熱ショック蛋白質(Hsp)に着目した.Hspは変性した蛋白質の品質管理や細胞死を抑制することで生存を促進する.この応答は年齢とともに低下し,進行性神経変性疾患での病因の一つと考えられている. Hspは種々の障害から内耳も保護することが知られている.内耳の老化でHspの変化を調べ,さらに様々な臓器でHsp誘導による保護効果を示し,かつ副作用が少ない薬剤であるGeranylgeranylacetone(GGA)を用い老人性難聴モデルマウスに対しての保護効果を検討した. 【材料と方法】4-40週齢の早期進行性老人性難聴マウスDBA/2Jと聴力正常のCBA/Nを用いた.GGAは,粉末餌に混ぜて4週齢から投与した.Hsp発現はwestern blot assayで評価した.聴覚評価には聴性脳幹反応検査(ABR)を使用した.組織学的評価をH.E.染色,蛍光免疫染色で評価した.さらに有毛細胞数を評価した. 【結果】対照マウスの蝸牛ではHsp70,Hsp110高発現が維持されていた.反対にDBA/2Jでは減少を認めた.このDBA/2JにGGAを投与すると有意にHspが誘導された.Hsp70は主な障害部位の有毛細胞に強く発現を認めた.ABRと有毛細胞欠損数で保護効果を示した. 【考察とまとめ】発現の違いが見られたHsp70・Hsp110は,加齢で発症する神経変性疾患においてその重要な役割が示唆されているものである.このことは内耳疾患でも同様の病態が存在することが推察された.GGAによって増強されたHspが強力に様々なpathwayを制御したため保護効果を示すことができたと考えられた.
- 2010-08-31
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