時間軸から見たリスクファクターと補綴歯科治療
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概要
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初診時の欠損歯列, 咬合の崩壊度が同じであっても治療後にさまざまな変化を来たしていることは多くの臨床例で経験済みである. その背景から欠損歯列は慢性疾患タイプの病態を示し, 時間軸という要素が非常に重要な意味を有することが浮かび上がってくる. 時間軸とはスピード, すなわち, 経時的な病態変化を意味する. 患者さんの抱えているリスクの種類大きさは多岐に渡り, さらにコントロールしやすいリスクと難しいものがある. 代表的なリスクファクターとして欠損歯列のレベルと崩壊原因があるが, これまでの義歯では複雑に要素が絡み明確にしづらかった. そこで, 従来法では変えることのできなかった欠損歯列の咬合支持レベル, 歯列内配置に対してインプラントを用いることによって擬似的に難易度を改善し経過観察を行った. その結果, 重要度が大きく, かつ, コントロールが難しいリスクとして崩壊原因の一つである過大な力が考えられた. 崩壊原因としては細菌感染を主体とした齲蝕, 歯周病, そして荷重要素としての過大な力, さらに補綴設計, 技術などがある. 宿主側に問題の主体がある歯周病を除き細菌感染は患者と歯科衛生士の協力によりコントロールが徐々につき始めている. また, 設計, 技術も最近は新素材などの臨床応用が進み問題は小さくなりつつある. しかし, 依然としてコントロールが難しいにも関わらず影響度の大きな力の要素は意識しながらも対応法に乏しい.<BR>実際にはさまざまな要素が複合的に絡んで崩壊が進行するが, リスクを予見し, 回避する補綴治療を行うことが機能, 形態回復のみならず, 二次予防効果を挙げるために重要である.
- 社団法人 日本補綴歯科学会の論文
- 2007-04-10
著者
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