過剰な咬合力の病態について
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概要
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従来より欠損歯列の診断は病態の把握という観点よりは, 補綴治療の指針として行われてきた傾向があった. にもかかわらずそれらの診断から明確な治療方針が導きだされることは少なく, 欠損という障害の程度や安定度を測る尺度として用いられてきたように思われる. このことは歯科補綴自体が欠損という障害のリハビリテーションとしての大きな役割を持つことの証でもあった. 一方で欠損を生み出す疾病の診断はう蝕や歯周病の診断に置き換わってしまった傾向も否めない. しかし近年臨床家のなかから, う蝕と歯周病だけでは解明できない症例を共通に認識するようになり, 今では「咬合力」とか「力」という言葉で原因論に加える見方が広まっている. これらの言葉の定義にはまだ統一した見解はないが, この第三の「力」は病因論を再検討するきっかけになっている.<BR>これらの病因を時間軸の中でみた場合, う蝕や歯周病はその時々の進行性や年齢からくる一般的な傾向など, いわゆる病態のベクトルに重きが置かれてきた. しかし咬合習癖や力といった病態には経年的に蓄積された総量や器質的な欠陥さえ考慮する必要性もでてきた. また外来の細菌感染を防ぐことによるう蝕や歯周病のリスク管理と, 個体に内在する神経筋機構のリスク管理ではまったく異なる次元のものでもある. 当然加齢や全身状態との関わりも異なり, 不調和の蓄積期間が崩壊スピードを決定する可能性もでてきた. いわゆる難症例といわれてきた症例は静的な欠損形態の診断からよりは, 自己制御できない過剰な咬合力や過剰な咬合満足感を診査することで深く理解できることが多くなったように思う. 今回は臨床例を通じて補綴治療の中に咬合力の診断の必要性を提案したい.
- 2007-04-10