飼料イネ国際シンポジウム開催にあたって
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概要
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イネを飼料として利用する技術は,畜産分野では数少ない日本発の技術である.1970年にはすでに飼料米の研究が開始されている.コメが生産過剰となる一方,畜産物需要が伸び,飼料を輸入するわが国の農業構造がその背景にある.また,2000年間かけて造成してきた水田を守ろうという意識も原動力であるに違いない.さらに,高温多湿な日本の気候条件に合致した独自の飼料生産技術を作りたいという熱意も働いたであろう.飼料イネの研究が海を越えたのは,2003年である.第1回の日・韓飼料イネシンポジウムが韓国で開催されたのである.両国は,コメの消費減少を受けて水田における飼料生産利用,畜産における飼料の自給拡大という共通の課題を有していることから,日韓農林水産技術協力委員会第35次会議において,「総体稲埋草生産及び利用に関する研究開発」が韓国側より提案され承認された.その中で韓国の畜産研究所と日本の畜産草地研究所が研究員の相互交流を行うとともに日韓共同セミナーを開催することとなっていたからである.それ以降,2004年は日本,2005年は韓国でそれぞれ開催された.2006年には中国も加わり,韓国のプサンで初めてアジア・大洋州畜産学会議(AAAP)のサテライトシンポジウムとして開催され,2007年には中国で,2008年にはマレーシアも加わり,今回紹介していただく,ベトナムのハノイでの第13回AAAPのサテライトシンポジウム開催へと続いた.アジア・大洋州畜産学会議(AAAP)において,日本独自の技術の国際シンポジウムを開催することの意義は大きい.世界有数の経済大国である日本に求められている国際貢献の責務を果たすものである.また,海外から導入した技術ではなく,日本発の技術・研究情報を発信しているという点で若い研究者に独創的な研究を行おうという意識を呼び起こすことも期待できる.今後とも日本発の畜産技術が世界に発信されれば素晴らしいことである.今回のシンポジウムの開催にあたっては,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター所長の丸山清明氏,日本畜産学会前理事長の佐藤英明氏,AAAP事務局長のProfessor Jong Kyu Ha, 第13回AAAP大会実行委員会のDr. Le Viet Lyに大変お世話いただいた.また,畜産草地研究所の蔡 義民氏には中国,マレーシアからの話題提供者の招へいにご尽力いただいた.独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構からは予算的な支援もいただいた.さらに,著者の皆様には今回の紹介記事への日本語訳の掲載を認めていただいた.各位に感謝いたします.
- 社団法人日本畜産学会の論文
- 2009-08-25
著者
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