血液透析患者の易感染性および予後における赤血球補体レセプターType 1(E-CR1)の意義
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
血液透析患者においては高齢化,糖尿病性腎症の増加などにより感染症の死亡率が高いことが問題となっている.血液透析患者は以前より免疫不全の状態にあるといわれ,感染症の多いことの理由として考えられているが病態に関しては多くは不明である.一方,補体レセプター1(CR1)は主に赤血球に存在し,補体レセプターと制御因子としての二つの機能がある.赤血球補体レセプター(E-CR1)の機能はImmune complex(IC)などに沈着した補体と結合し,肝,脾で処理するためにICを運搬する役目を担っている.血液透析患者は腎からのエリスロポエチン(EPO)の産生量の低下により腎性貧血となり,赤血球数が減少する.さらに,病態の影響によりE-CR1の発現が抑制されているなら,体内のE-CR1は極めて少なくなり,感染などに対し不利な状態になると考えられる.このような考えから検討した結果,次のようなことがわかっている.Recombinant EPO治療により補体制御因子(DAF,CD59)の発現増強を認めたが,E-CR1は発現増強を認めるものと認めないものが存在した.また,遺伝的な影響をみるためCR1のポリモルフィズムの検討で低発現のLL型のみならず本来高値を示すHH型においても低値を認め,血液中の変化などの後天的な影響が考えられた.特に非糖尿病群との比較で糖尿病においてはE-CR1の有意な低値を認めた.また,E-CR1低値の群は高値の群に比較し,感染症が多く,シャント血管炎,HCV感染を多く認め,5年の経過観察で生存率の有意な低下を認めた.血液透析患者のE-CR1は遺伝,病態,治療の影響をうける.腎性貧血による体内のE-CR1の減少は生体防御のうえで不利な状態を招き,血液透析患者の感染症および予後不良の危険因子と考えられる.
- 2010-12-28
著者
関連論文
- 抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体),抗尿細管基底膜抗体(抗TBM抗体) (広範囲 血液・尿化学検査 免疫学的検査(第7版・3)その数値をどう読むか) -- (免疫学的検査 自己抗体)
- 血液透析患者の易感染性および予後における赤血球補体レセプターType1(E-CR1)の意義
- 血液透析患者の易感染性および予後における赤血球補体レセプターType 1(E-CR1)の意義
- Nephritic factor研究の経緯からみた膜性増殖性糸球体腎炎の病態
- Nephritic factor 研究の経緯からみた膜性増殖性糸球体腎炎の病態