奥多摩町森林セラピー基地「登計トレイル」 人工林再生と高齢者福祉を視野に入れる森林セラピートレイルのデザイン手法
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論は,東京都奥多摩町に整備された森林セラピートレイル「登計トレイル」に関して,そのランドスケープデザインの策定過程とそこから見いだされたデザインの手法を論ずるものである。特に,「登計トレイル」は,北向き急勾配山腹の人工林を再生活用する点,地元高齢者福祉を含めた活用を視野に入れる点において独自の計画,デザインが求められたものである。計画段階で見いだされたテーマは,従来の歩行運動中心型から,森林内での休息滞留を中心とするセラピートレイルの型を見つけ出すことであり,それを「森のリビングルーム」と位置づける。デザイン段階のテーマは,森林セラピーのプログラムから要請される条件と,敷地の森林特性を顕在化する手法の融合を意識することである。そこから,白を基調とする色彩計画,水平線を基調とする構造物計画,建築内外空間の有機的統合の3 点が具体的なデザイン言語として有効である。また実施設計段階では,計画テーマを実現するために,コストの問題,急勾配斜面における工法の問題を解決する必要が生じ,そこから森林土木構造物の標準施工マニュアルにデザイン的な解釈を与えて応用する手法を考案する。以上より得られた,計画,基本設計,実施設計のデザイン手法は,日本全国に存する中山間地域の,放置人工林の再利用と,高齢者福祉に向けた森林セラピートレイルの適用に貢献するものと考える。
- 2010-11-30