慢性骨髄性白血病の免疫機構と免疫療法の展望
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概要
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造血器腫瘍疾患は,多くの場合免疫担当細胞の腫瘍性疾患であり,免疫の機能異常を随伴する場合がある.しかしながら疾患のタイプや治療反応性により病態は異なり,必ずしも常に免疫抑制状態にあるわけではない.慢性骨髄性白血病(CML)はPh1染色体を有し,BCR-ABL融合遺伝子の遺伝子産物であるBCR-ABLチロシンキナーゼが白血化をもたらす疾患であり,通常数年の慢性期を経て移行期,急性転化を来たす予後不良の疾患である.近年このチロシンキナーゼに対する分子標的治療薬であるimatinib mesylate(イマチニブ)により予後が目覚しく改善されている.しかし白血病幹細胞への効果がないため,治療中における耐性,不応性が臨床的に問題となる.一方,CML患者の免疫能に関して様々な報告がある.BCR-ABL, Proteinase 3 (PR-1)等がCMLの腫瘍抗原として同定されており,これらのエピトープに対する細胞傷害性T細胞(CTL)が検出され,免疫療法も施行されている.我々は,CML患者の末梢血中のTCRレパトアの解析により,オリゴクローナルなT細胞の集積があること,更に樹状細胞療法により新規CTLが誘導されることを明らかにした.更に自然免疫の評価として,イマチニブを使用している血液学的完全寛解のCML慢性期の患者を対象として細胞学的効果とVα24 iNKT細胞の機能的解析の関連性を検討した.その結果,イマチニブ療法を受けているCML患者の多くはNKT細胞数の減少が認められることと,この中の細胞学的部分寛解症例は,Vα24 iNKT細胞数が比較的保たれていても,IFN-γ産生が認められないことが判明した.この機構はVα24 iNKT細胞自体ではなく,末梢血に含まれる単球の抗原提示異常があることがわかり,実際に樹状細胞で再刺激することによりVα24 iNKT細胞機能が回復した.以上のことは,疾患の進行と免疫の関与を意味すると共に,分子標的治療薬であるイマチニブ治療群での残存白血病細胞に対して免疫療法併用の可能性を示唆している.
- 2009-08-31
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