心室細動に関与する細胞内カルシウム動態
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概要
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2000年にChoiとSalamaが,蛍光色素を用いた心筋組織染色による細胞内カルシウム(Ca)と活動電位の二重同時マッピングを発表した.Bersらは,単一心筋細胞を用いて細胞内Caシグナルが活動電位に与える影響について精力的に研究した.これらの研究から,細胞内Caと活動電位の関係を知るうえで重要な所見が提供された.L型Caチャネルは電位依存性に開口し,そのwindow currentは−40mV付近にピークがあるため,細胞膜電位の変化が細胞内Ca濃度に影響を与えると考えられてきた.しかし,ナトリウム(Na)-Ca交換系の働きによって,過剰な細胞内CaはNaの細胞内への流入を促進するために早期後脱分極し,筋小胞体内にCaが非生理的に蓄積するとそこからの電位非依存性Ca放出が起こり細胞膜を脱分極させる(遅延後脱分極)ことがわかった.このように,細胞内Caの増加または細胞内Caサイクリングの異常が不整脈の発生に関与していることが示された.つまり,細胞膜電位が細胞内Caに影響を与える一方で,細胞内Caも膜電位を変化させるという両方向性の関係(bidirectional coupling)が存在することがわかった.致死性不整脈である心室細動(VF)の機序について,光学マッピングの技術を用いて細胞内Ca動態がどのようにVFの発生,維持,停止に関与しているのかを検討した.
- 特定非営利活動法人 日本心電学会の論文
- 2009-06-04