ヒト新規小胞体タンパク質HRD1の神経変性疾患治療に関する薬理学的基盤研究
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概要
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小胞体のタンパク質品質管理機構の破綻に伴う小胞体への変性タンパク質の蓄積は,小胞体ストレスと呼ばれ,最近,神経変性疾患をはじめ多くの疾患発症に関与することが示唆されている.しかし,小胞体ストレス防御機構の一つである小胞体のタンパク質分解系endoplasmic reticulum-associated degradation(ERAD)に関わる遺伝子はほとんど解明されていない.筆者らは,バイオインフォマティクス的手法により,数種の新規ヒトERAD関連遺伝子の同定に成功した.その一つであるヒトHRD1に関し詳細に検討した結果,(1)ユビキチンリガーゼ活性を有し,小胞体ストレスを抑制すること,(2)脳において神経細胞特異的に発現すること,(3)Pael-R(家族性パーキンソン病責任遺伝子Parkinの基質タンパク質)を分解促進することにより神経細胞死を抑制すること,(4)APP(アルツハイマー病原因タンパク質アミロイドβの前駆体)を分解促進することによりAβの産生を抑制し,さらに,アルツハイマー病患者死後脳でタンパク質量が減少していること,(5)IRE1-XBP1経路によって誘導されること等を見出した.これらの新知見から,HRD1の発現を促進する薬物,もしくはHRD1のタンパク質の減少を抑制する薬物は,神経変性疾患治療薬となりうることが考えられる.
- 2009-05-01
著者
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