長時間作用性局所麻酔薬 塩酸レボブピバカイン(注射剤ポプスカイン^【○!R】)の薬理学的特徴および臨床試験成績
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概要
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レボブピバカインは,英国のChiroscience社(現UCB社)が開発した長時間作用性の局所麻酔薬であり,ブピバカイン(ラセミ体)のS(-)異性体である.摘出ラット脊髄後根神経細胞外電位に対する抑制作用を指標にレボブピバカインの作用を検討した結果,ブピバカインあるいはR(+)異性体(R-ブピバカイン)と同等であり,ロピバカインに比べ約3倍強かった.さらに,ラットを用いた硬膜外投与および脊髄くも膜下投与時の局所麻酔作用においても,レボブピバカインの痛覚神経遮断作用は,ブピバカインとほぼ同等であり,ロピバカインの約1.5から2倍強かった.一方,レボブピバカインの運動神経遮断作用は,ブピバカインとほぼ同等あるいはやや弱い傾向が認められ,ロピバカインとは,硬膜外投与時では,高濃度(1.0%)でのみ有意に強く,脊髄くも膜下投与時ではほぼ同等であった.これらの成績はレボブピバカインの分離麻酔作用を示唆するものであった.そこで,脊髄後根神経細胞活動電位を伝導速度からAβ線維,Aδ線維およびC線維に分離し,それぞれの活動電位に対する抑制作用を検討した.IC50値比(C/AβあるいはAδ/Aβ)はいずれもブピバカイン=R-ブピバカイン>ロピバカイン>レボブピバカインの順であり,レボブピバカインは触覚・圧覚を伝える線維に対する抑制作用に比べ,痛みを伝える線維に対する抑制効果が強いことが示された.またレボブピバカインの安全性に関し,イヌを用いて平均痙攣誘発量の2倍量を投与し,痙攣誘発後速やかに蘇生術を施し,心循環系に及ぼす影響を比較検討した.レボブピバカイン群では全てが蘇生し,不整脈発現に至った動物はなく,レボブピバカインの痙攣発現から致死的な不整脈発現に至る危険性が他剤に比べ低いことが示唆された.本邦において実施されたレボブピバカインの硬膜外麻酔に関する第II/III相試験の結果,痛覚神経遮断の作用持続時間,動神経遮断効果の持続時間共に,ロピバカインに比べ有意に長く,術後鎮痛に関する第II/III相試験では,「覚醒確認後21時間までの鎮痛薬(ペンタゾシン)の使用量」は,レボブピバカインとロピバカインで同等であったが,鎮痛薬を使用しなかった症例の割合はレボブピバカインの方が有意に高かった.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2009-03-01
著者
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