高流量化した標準内シャントによって鎖骨下動脈スチール症候群を発症した1例
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概要
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透析に導入されてから13年を経過した63歳女性に,鎖骨下動脈スチール症候群(subclavian steal syndrome(SSS))の発症がみられた.患者は50歳のときに,糖尿病を合併するIgA腎症を原病とする腎不全に対して,左前腕定型的標準的内シャントを設置して血液透析を始めた.約10年を経過したころからめまいの散発をみるようになり,検索を受けた脳神経外科で,左椎骨動脈の逆流現象が認められた時点で,subclavian steal phenomenon(SSP)と診断され,経過観察を指示されていた.13年を経過した2008年初めから,めまい,吐き気が頻発し,再び脳神経外科で検索を受けSSSと診断された.内シャントの影響を考慮に加えることにより高流量化した前腕の内シャントが,鎖骨下動脈の血流速度を亢進するとともに,鎖骨下動脈の血圧を低下することになり,椎骨動脈の逆流をきたし,椎骨脳底動脈血流不全(verteblobasilar insufficiency(VBI))をきたしたという病態が判明した.診断のために,脳血管造影,MRA,SPECTなどが用いられたが,診断過程から経過観察過程まで含めて,血管Echo検査が有用であった.高流量化した内シャントに吻合の縮小,静脈床の削減を行ってシャント血流量の減量をはかったが無効で,従来のシャントを閉鎖し対側前腕に新たに内シャントを造設することによりSSSは消失した.
- 2009-07-28
著者
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佐々木 路佳
養生館苫小牧日翔病院外科
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近藤 正道
養生館苫小牧日翔病院外科
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熊谷 文昭
養生館苫小牧日翔病院外科
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櫛田 隆久
養生館苫小牧日翔病院外科
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由良 茂貴
養生館苫小牧日翔病院脳神経外科
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石崎 賢一
養生館苫小牧日翔病院脳神経外科
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坂本 和也
養生館苫小牧日翔病院泌尿器科
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