抗炎症作用に基づくアプローチの可能性
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概要
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2012年の腎臓病患者の予測は3,500万人を超え,透析医療は各国の医療経済を圧迫している.また,先進国では高齢化や生活習慣に基づく,高タンパク摂取,高血圧,高血糖,高食塩負荷等の腎への負担は増大している.しかしながら,誤解を恐れずに表現すれば一般的に腎臓は再生しないと考えられている.魚類におけるネフロン再生は報告されているものの,両生類以上での再生は見られず,ヒトに至っては幹細胞から足突起細胞への分化にすら成功していない.従って,人は神への挑戦にも増して,腎疾患進行にブレーキをかける薬剤の開発に注力すべきであろう.腎疾患の発症,進展には糸球体過剰濾過に代表される非免疫学的機序と接着分子発現亢進や炎症メディエーター産生を介した免疫炎症反応が複雑に関与していることは良く知られている.現在,糸球体過剰濾過を是正するレニン・アンジオテンシン系の抑制が腎機能維持の第一選択として一般化されているが,腎疾患の進行を完全に食い止めることはできず,他のキープレーヤーの存在が示唆されている.近年,代謝拮抗薬であるmethotrexateがリウマチ患者の心血管イベントを抑制する事が報告された事から,従来にも増して心血管病変における免疫炎症反応の関与が注目されている.当然,動脈硬化病変形成に酷似している腎疾患の進行抑制において新たなアプローチとして免疫炎症反応への関心が高まる.創薬に必須の腎疾患動物モデルではどうだろうか.腎炎モデル動物ならいざ知らず,非免疫学的に惹起した慢性腎疾患モデル動物における免疫炎症反応が主役級の役割を果たしているか否かに興味が持たれる.そこで,本稿で非免疫学的に作製する腎疾患モデルの発症,進展への免疫炎症反応の関与および血行動態改善薬への上乗せ効果が期待出来る免疫炎症反応抑制薬について概説する.
- 2008-08-01