脳内プロテアーゼの活性制御によるアルツハイマー病の治療戦略
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概要
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アルツハイマー病(AD)では脳内のアミロイドβペプチド(Aβ)の凝集・蓄積が発症の引き金となることから,本症の根本的な克服のためには脳内Aβレベルを低下させることが必要である.Aβは前駆体タンパク質よりβおよびγセクレターゼによる二段階切断によって産生するが,分解過程にはネプリライシンが深く関わる.ネプリライシンは既報のAβ分解酵素の中で唯一オリゴマー型Aβを分解できる酵素的特性を有し,シナプス近傍におけるオリゴマー型Aβの分解に寄与する.このように脳内Aβの動態にはプロテアーゼが大きな役割を果たす.一方,最近の研究で,Ca2+依存性細胞内システインプロテアーゼ・カルパインの活性化により,脳内Aβの蓄積およびタウのリン酸化が促進することが明らかになった.本節では,AD研究の現在の動向について触れるとともに,Aβの神経毒性機構(オリゴマー仮説)とこれらのプロテアーゼを標的としたADの治療戦略について解説する.
- 2008-05-01
著者
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西道 隆臣
独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チーム
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樋口 真人
独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター分子生態研究チーム
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岩田 修永
独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チーム
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