血液透析患者にみられたイオン交換樹脂製剤による腸炎の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は血液透析歴5年の63歳,女性.飲水食事制限が不十分で高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸カルシウム(PS-Ca)を,高リン血症に対し炭酸カルシウムおよびコレスチミド(Col)を,および頑固な便秘に対し下剤を内服していた.04年1月貧血および便潜血陽性がみられ大腸内視鏡(CF)を施行.大腸憩室および出血性腸炎と診断され絶食と輸血で軽快.その後暫くは落ち着いていたがエリスロポエチンβ 9,000U/週投与にもかかわらず貧血進行があり再度便潜血陽性となった.同年4月の上部内視鏡では軽い表層性胃炎と診断.それに対する治療を続けるも貧血と便潜血の改善がなく6月にCFを再検.上行,下行結腸に数個の憩室のほか横行結腸(特に右側)にヒダ頂部を中心とする飛び石状のびらん〜潰瘍を認めた.同部位の生検では粘膜固有層に慢性炎症細胞浸潤および多角形の結晶性物質がみられ,多種の染色(Hematoxylin Eosin, Congo Red, Direct Schiff, PAS)にてそれらはPS-CaとColと判明した.以上より繰り返す大腸炎の原因として内服したイオン交換樹脂製剤の関与が濃厚に示唆された.また当症例においては頑固な便秘があったことが上記薬剤の副作用をおこしやすくしたものと推察された.
- 2008-03-28