近代以前の日本人における下顎隆起の出現頻度について
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概要
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縄文人105個体,鎌倉時代人90個体,近代日本人105個体における下顎隆起の出現頻度と形態を観察し,環境因子(歯数,歯の位置異常の程度,咬耗量)との相関について考察した。触診で認められる下顎隆起の出現頻度は,縄文人で83.5%,鎌倉時代人で62.3%,近代日本人で64.8%だった。肉眼で認められる下顎隆起の出現頻度は,縄文人で70.1%,鎌倉時代人で18.2%,近代日本人で22.0%だった。下顎隆起のクラス別出現頻度に関しては,縄文人と鎌倉時代人,および縄文人と近代日本人の間で有意差が認められた。鎌倉時代人と近代日本人における下顎隆起の最好発部位は第一小臼歯部だったが,縄文人における最好発部位は,より遠心の第二小臼歯部だった。下顎隆起の出現部位に関しては,縄文人と鎌倉時代人,および縄文人と近代日本人の間で有意差が認められた。縄文人において,下顎隆起のサイズと咬耗量の間に正の相関が認められ,鎌倉時代人においては,下顎隆起のクラスおよびサイズと咬耗量の間に正の相関が認められた。咬耗量が多い個体は,下顎骨や歯に多大な負荷を受けたか,または長期的に負荷が加えられたと推察できることから,下顎骨にかかる負荷が下顎隆起を増大させる原因の一つと考えられる。また,下顎隆起の出現頻度が高くなる原因の一つとして,遺伝的要因も考えられる。
- 日本人類学会の論文
- 2007-12-01
著者
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