ヘムオキシゲナーゼ-1によるアレルギー性炎症抑制の可能性について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年花粉症や気管支喘息に代表されるI型アレルギー性炎症の頻度は極めて高い.このI型アレルギー性炎症では,肥満細胞がエフェクター細胞として重要な役割を果たしている.肥満細胞は,IgE受容体を介した抗原抗体反応が引き金となり脱顆粒し,即時相反応を引き起こすだけでなく,脱顆粒と同時に炎症性サイトカインを産生分泌し,他の免疫細胞を局所に浸潤させることにより遅発相反応も引き起こす.また肥満細胞から産生されるサイトカインが,T細胞に作用して,Th1/Th2バランスに影響を与えたり,B細胞に作用して抗体産生を持続させることで,アレルギー反応を遷延化するともいわれている.一方,ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は,種々のストレスによって誘導され,ヘムを分解して一酸化炭素,ビリベルジンおよび鉄を産生することにより,細胞保護作用を示すストレスタンパク質である.我々は,他の免疫細胞と同様に肥満細胞においても,抗原抗体反応によって生じる活性酸素や,LPS刺激によってHO-1が誘導されることを見出した.肥満細胞のモデル細胞であるRBL-2H3細胞にHO-1を遺伝子導入し,HO-1を高発現させ,肥満細胞におけるHO-1の役割について検討したところ,HO-1は,肥満細胞の抗原抗体反応により産生される炎症性メディエーターのうち,アレルギー性炎症を遷延化させる働きのあるTNF-αやIL-3,MIP-1βの発現を抑制することを発見した.この抑制作用はHO-1が転写因子AP-1を特異的に抑制することにより引き起こされることを明らかにした.これらの結果は,HO-1が肥満細胞に発現することによって,アレルギー性炎症の増悪化を防止できる可能性を示唆している.アレルギー性炎症の新規治療薬が望まれている今日において,HO-1が肥満細胞のメディエーター産生抑制作用を持つという結果は,非常に有益な情報であると思われる.
- 2007-10-01
著者
関連論文
- ヘムオキシゲナーゼ-1によるアレルギー性炎症抑制の可能性について
- 158 ヒト肥満細胞におけるTLR4発現に対する菌体成分の影響(肥満細胞,好塩基球1,一般演題(デジタルポスター),第57回日本アレルギー学会秋季学術大会)
- 細菌由来成分によるアレルギー治療の可能性について--マスト細胞の機能変化を中心に (生体機能と創薬シンポジウム2007--創薬研究のルネサンスをめざして 講演要旨集) -- (シンポジウム 新しいアレルギー疾患治療薬の開発戦略)
- 225 菌体成分暴露時における肥満細胞のTLRの発現変化(肥満細胞, 好塩基球(4), 第55回日本アレルギー学会秋季学術大会)
- アレルギー性炎症における肥満細胞の役割 : 肥満細胞の引き起こす炎症を自然免疫の観点から考える
- 106 菌体成分暴露時におけるマスト細胞の機能変化
- Hyaluronidase-Inhibitory and Anti-allergic Activities of the Photo-Irradiated Products of Tranilast
- ラットを用いたヒスタミン誘発鼻アレルギーモデルにおける血小板活性化因子 (PAF) の関与
- Superoxide Anion-Induced Histamine Release from Rat Peritoneal Mast Cells
- 血小板活性化因子(PAF)によるマウス皮膚血管透過性亢進に関する研究--抗アレルギ-薬の評価への応用