排尿障害治療薬の基礎
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概要
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現在,注目されている下部尿路機能障害を有する疾患として,過活動膀胱,前立腺肥大症,腹圧性尿失禁,低活動膀胱,間質性膀胱炎等が挙げられる.1980年代から下部尿路機能障害に対する創薬研究が活発になり,過活動膀胱治療薬としてムスカリン受容体拮抗薬が,前立腺肥大症治療薬としてα1受容体拮抗薬が上市されてきた.これら治療薬の上市に伴い下部尿路機能障害に対する患者および研究者の関心や理解も高まってきている.20年前と比較すると本領域の基礎研究を行う機関や研究者も増加し,下部尿路系における様々な新知見が得られている.しかしながら,過活動膀胱や前立腺肥大症の治療においても現在用いることができる薬剤の多様性は少ない.そのために,作用機序に基づく副作用の発現や現時点で使用しうる既存薬では満足な治療効果が得られない患者が認められることも事実である.したがって,下部尿路機能障害の治療において新規な作用機序を有する薬剤を創製することは今後も必要であると考えられる.この報告では,既存薬に加え新規治療薬を目指した創薬研究が近年話題となっている過活動膀胱や前立腺肥大症,および今後治療薬の創製が望まれる疾患である腹圧性尿失禁に焦点をあて,新規作用機序に基づく創薬および現在開発中の化合物の特徴を述べた.過活動膀胱の治療薬としては,β3受容体刺激による膀胱平滑筋の弛緩に加え,膀胱求心性神経の抑制を介した尿意切迫感の抑制および排尿筋過活動の改善が創薬コンセプトとして注目されている.また,前立腺肥大症に対しては前立腺を増殖させる因子のひとつである男性ホルモンの作用を抑制する薬剤の研究および臨床開発がトレンドとなるとともに,尿道抵抗の低下を目指したα1受容体以外の機序としてホスホジエステラーゼ阻害薬の可能性が模索されている.さらに,十分な治療効果を発揮し得る薬剤が未だ存在しない腹圧性尿失禁に対しても排尿反射を調節することによる禁制維持を目指した薬剤の研究・開発が進められている.一方,それぞれの疾患・症状の評価に用いられている病態動物モデルに関する知見についても,すでに臨床で使用されている薬剤の研究成績とともに紹介し,これら病態動物モデルを用いた研究における臨床予測性を考察した.
- 2007-05-01
著者
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