ストレス応答のかなめCRH遺伝子
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ストレスから自らを防御するためには糖質コルチコイド(GC)が不可欠であるが,中枢性に糖質コルチコイド合成・分泌を制御するのが視床下部のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)ニューロンである.ヒトでもげっ歯類でもCRHは視床下部室傍核(PVN)の小型神経細胞で産生される.CRHニューロンにはバゾプレッシン(AVP)が共存し,両者が下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌を調節する.CRHニューロンの活動性はGCなどの液性因子および入力神経終末から放出される神経伝達物質によって調節されている.たとえば実験動物PVN内に代表的神経伝達物質の一つであるノルエピネフリン(NE)を注入するとCRH遺伝子発現が増加することから脳内NE神経はCRHニューロン刺激系と考えられる.CRHとAVPは共に小型神経細胞に存在するにもかかわらずストレス時これらの遺伝子発現は必ずしも平行しない.この現象を説明する細胞内メカニズムとして両遺伝子転写機構の違いがあげられるが,CRHとAVPによる二重支配はストレス防御という視点からは生体応答の多様性の一つとして理解される.ストレスは様々な病態と深く関わっており,脳内ストレス情報処理機構の解明がストレス関連疾患の治療・予防に寄与するものと期待される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-09-01
著者
-
井樋 慶一
東北大学大学院情報科学研究科
-
井樋 慶一
東北大学大学院情報科学研究科情報生物学分野
-
井樋 慶一
東北大学大学院情報科学研究科生体システム情報学講座情報生物学分野
-
井樋 慶一
東北大学大学院医学系研究科 分子血管病態学分野
関連論文
- ^Inオクトレオタイドスキャンにて確定診断のついた気管支カルチノイドによる異所性ACTH症候群の1例
- ^In-ペンテトレオチド(MP-1727)第III相追加臨床試験 : ソマトスタチン受容体の存在を指標とする消化管ホルモン産生腫瘍の画像診断
- CRHと睡眠
- PROFILE
- ストレス応答のかなめCRH遺伝子
- 序文
- イントロン特異的プローブを用いた遺伝子一次転写産物検出法 : 神経内分泌遺伝子での検討
- 脳内ノルエピネフリン系による視床下部CRHおよびバゾプレッシン遺伝子転写調節機構
- 原発性アルドステロン症におけるコルチゾール自律分泌群
- 睡眠障害と視床下部-下垂体-副腎系 (特集 日常的な健康問題におけるCRF-ACTH-コルチゾール系の重要性)
- 気になる脳部位(第15回)視床下部室傍核
- バソプレシンおよびオキシトシンの中枢作用と創薬ターゲットとしてのバソプレシン受容体,オキシトシン受容体の意義 (特集 バソプレシンと受容体拮抗薬の臨床応用)