精子機能における脂質ラフトと硫酸化ガラクトシルグリセロ脂質 (SGG) : 合意と反駁
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概要
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脂質ラフトはコレステロールや糖脂質、飽和脂肪酸に富んだ秩序膜マイクロドメインである。また、ラフトには細胞接着やシグナリングに関わる分子が集積し、このような現象の足場であると考えられている。ラフトは非常に活発な研究分野であるが、多くの点が論争中である。最近画像研究の進歩により、個々のラフトがナノメートルのサイズであることが分かった。このことは、細胞から低密度膜画分として得られるラフトは個々のラフトが合体した “マクロラフト” であるということを示唆している。さらに、TritonX-100を用いたラフトの単離について、界面活性剤がラフトの形成を引き起こしているのではないかという論争が残っている。そこで、この分野の研究者達は、よりマイルドな非イオン性界面活性剤や物理的な力 (たとえば、窒素キャビテーション) を用いることによりラフトを単離してきた。精子―卵相互作用は、細胞接着やシグナリングにおけるラフトの役割を立証するのに適した系統である。最近、我々は受精能を獲得したブタ精子由来のTritonX-100不溶性膜ラフトが、受精能を獲得していない精子ラフトに比べてより低いKd値でZP (zona pellucida) に結合することを明らかにしてきた。これらの結果は、受精能を獲得した精子は受精能を持たない精子に比べてZPへの結合能が増幅されているという事実を後押ししているかもしれない。また、受精能を獲得した精子がZPに結合しやすいという現象の一因として、受精能を獲得する際にコレステロールが放出されるにも関わらず、依然として十分量のラフトが存在するという事が挙げられる。注目すべき事に、通常、体細胞由来のラフトのマーカーとして用いられるGM1が、受精能を獲得した精子ラフトには存在しない。むしろ、生殖細胞特異的なsulfogalactosylglycerolipid (SGG) の70%が精子ラフトには存在し、精子ラフトのマーカーとして魅力的な候補となっている。それでも、これらの研究において用いたラフトは、TritonX-100によって単離したものであるから、物理的な力を用いて調製したラフトを使って再実験をしてみる必要性はある。最終的には、精子由来ラフトが体細胞由来のラフトと同様に、ナノメートルのサイズなのかどうかを、適切なマーカーを用いて画像研究を行い決定しなければならない。
- 2007-03-02
著者
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NONGNUJ Tanphaichitr
Hormones/Growth/Development, Ottawa Health Research Institute
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KYM F.
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory, the NPI-Semel Institute of Neuroscience and Human Behavior and
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ARMAN Yaghoubian
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory, the NPI-Semel Institute of Neuroscience and Human Behavior and
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HONGBIN Xu
Hormones/Growth/Development, Ottawa Health Research Institute
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Kym F.
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory The Npi-semel Institute Of Neuroscience And Human Behavior And
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Hongbin Xu
Hormones/growth/development Ottawa Health Research Institute
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Arman Yaghoubian
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory The Npi-semel Institute Of Neuroscience And Human Behavior And
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Nongnuj Tanphaichitr
Hormones/growth/development Ottawa Health Research Institute
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Tanphaichitr Nongnuj
Hormones/Growth/Development, Ottawa Health Research Institute
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Faull Kym
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory, the NPI-Semel Institute of Neuroscience and Human Behavior and the Department of Psychiatry & Biobehavioral Sciences, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles
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Yaghoubian Arman
Pasarow Mass Spectrometry Laboratory, the NPI-Semel Institute of Neuroscience and Human Behavior and the Department of Psychiatry & Biobehavioral Sciences, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles