慢性閉塞性肺疾患に対する薬物療法の現状と今後の治療薬に期待すること
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概要
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく,進行性の気流制限を呈する疾患である.危険因子としては喫煙が最も重要であるが,患者側の要因も重要である.病因としては,プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡仮説,オキシダント・アンチオキシダント不均衡仮説が有力である.治療は患者の重症度に合わせて,禁煙指導・薬物療法・栄養療法・呼吸リハビリテーションなどが包括的に行われている.薬物療法では,β2刺激薬・抗コリン薬・メチルキサンチンといった気管支拡張薬が主体であり,症状を軽減させ,QOLや運動耐容能を改善させるという効果からも重要である.今後の治療としては,気道や肺胞の炎症および肺胞壁の破壊を抑制するような,つまりプロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡やオキシダント・アンチオキシダント不均衡を是正する新規薬剤の出現が期待される. 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,以下COPD)は,有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患と定義されている.COPDの臨床像は図1のように理解されており,主として肺胞系の破壊が進行して気腫優位型になるものと,中枢気道病変が進行し気道病変優位型になるものがある. アメリカではCOPDの患者数は1600万人以上であり,死亡原因の4位となっている.日本においても,近年行われたNICE study(Nippon COPD Epidemiology Stucy)によると,40歳以上の男性のCOPD有病率は16.4%,40歳以上の女性では5.0%,全体で8.6%と欧米同様に高い有病率である(1).発展途上国では,喫煙率の増加によりCOPD患者数はさらに増加してくるものと考えられる. COPDの危険因子として,まず喫煙・大気汚染・アデノウイルスの潜伏感染などの外因性のものが挙げられる.喫煙は最も重要な外因性危険因子であるが,COPDを発症するのは喫煙者の15〜20%であることから,患者側の要因つまりCOPD発症感受性遺伝子の検討も重要である.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2006-04-01