化学療法薬からの癌細胞のサバイバルメカニズム
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概要
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抗癌薬に対する耐性の存在は悪性腫瘍の化学療法にとって重要な問題である.抗癌薬耐性悪性腫瘍の耐性メカニズムを解明し,克服してゆくことが癌化学療法の有効性を高める為に求められている.抗癌薬耐性のメカニズムとしては,大きく“薬剤に対する抵抗性“と細胞死やアポトーシスを誘導する広範な遺伝子的なストレスに対して抵抗性が高くなる“細胞死に対する抵抗性“に分けることができる.薬剤に対する抵抗性のメカニズムはさらに,1. 薬剤の取り込みおよび排出に関するもの,2. 薬剤代謝酵素の変化によるもの,3. 薬剤の標的分子の量的・質的変化によるものに分類できる.後者の細胞死に対する抵抗性としては,4. 腫瘍微小環境に関わるもの,5. DNA修復系に関わるもの,6. 抗細胞死シグナルの活性化によるものなどが存在する.1.では薬剤排出をになうP-glycoproteinやMRP1-5,ATB7BなどのABCトランスポーターが代表的である.ABCトランスポーターの同じ部位に結合し抗癌薬の排出と拮抗する薬剤が耐性克服薬としての応用が試みられている.2. には活性化が必要な薬剤の特異活性化酵素の欠損による活性化体の減少と解毒酵素,特にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)によるグルタチオン抱合が多くの抗癌薬の耐性に関与している.さらにGSTの高発現細胞では,抱合反応の基質とならない抗癌薬に対しても,MAPキナーゼキナーゼキナーゼ:ASK1とのタンパク相互作用により薬剤耐性をもたらす.3. として近年,トポイソメラーゼを標的とする抗癌薬でのトポイソメラーゼIIaの変異やタキソール類に対する耐性とβ-チューブリンサブタイプの発現の関係が明らかになってきた.4. は固形腫瘍で腫瘍周囲に生じる微小環境がもたらすストレスタンパクや核のプロテアソームが耐性克服の標的となる.5. には,損傷したDNAを修復する直接修復/塩基除去修復/ヌクレオチド除去修復/ミスマッチ修復にかかわる酵素の増幅や欠失があげられる.6. には,抗細胞死/抗アポトーシス経路の多くの因子が関与するが現在,もっとも注目されている一つがAktの関与する経路である.さらにPI3K/mTOR/PLDを加えたこのユニットの抑制で有望なものは,mTORを抑制するラパマイシンおよびその誘導体である.高Aktの活性化を持つ薬剤耐性細胞でラパマイシンは抗癌薬と相乗的な作用を示す.
- 2006-05-01
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