甲状腺機能などホルモン異常によるNPY発現変化と摂食行動
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概要
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摂食調節は視床下部の摂食促進因子であるneuropeptide Y(NPY)/agouti-related peptide(AGRP)と抑制因子であるproopiomelanocortin(POMC)/cocaine and amphetamine-regulated transcript(CART)が末梢のシグナルを感知し制御されると考えられている.我々は甲状腺中毒症での摂食亢進のメカニズムを検討する目的で,甲状腺ホルモンT3を投与した甲状腺中毒症ラットにおける摂食状態の変化,視床下部神経ペプチドの変化を観察した.甲状腺中毒症ラットでは,体重の減少と摂食量の増加を認めた.血中インスリン濃度は増加していたが,血中レプチン濃度は有意に低下していた.胃のグレリン遺伝子発現,血中グレリン濃度は変化しなかった.視床下部NPYは増加し,POMC/CARTは減少した.オレキシン,melanin concentrating hormone(MCH)は変化しなかった.甲状腺中毒症ラットの脳室内にNPY/Y1受容体特異的拮抗薬であるBIBO3304を投与すると摂食量,飲水量ともに抑制された.以上より,甲状腺ホルモンによる摂食亢進は甲状腺ホルモンの作用によるエネルギー消費の亢進ではなく,血中レプチン濃度の減少とそれに伴う視床下部NPY遺伝子発現の増加とPOMC/CART遺伝子発現の減少によってもたらされると考えられた.BIBO3304の中枢投与により摂食量と飲水量が抑制されたことよりこの摂食亢進はY1受容体を介することが示唆された.次に我々は低用量のT3単回皮下投与4時間後の摂食量を測定した.低容量T3投与群では,摂食量は有意に増加したが,視床下部NPY,POMC遺伝子発現は対照群との間に差は認めなかった.このことより,低用量のT3はレプチン-NPY系を介することなく,T3の直接作用による摂食調節機構の存在が想定される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2006-02-01
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