新規カルシウム拮抗薬標的としてのTRPチャネル
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概要
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細胞応答において,カルシウムイオン(Ca2+)はセカンドメッセンジャーとして極めて重要な役割を果たしている.細胞表層の様々な液性因子受容体刺激や物理的刺激により,イノシトール代謝回転を経由して細胞外からカチオン/Ca2+が流入し,増殖・分化などの生理応答が誘導される.このカチオン/Ca2+流入を担うのが受容体活性化カチオンチャネル(receptor activated cation channel:RACC)である.生理的枢要性から,RACCは魅力的な創薬ターゲットとして位置づけられる.また,最近の研究成果から,RACCの分子実体はTRPチャネルであると考えられている.しかし,RACCは分子実体が明らかにされてからまだ日が浅く,活性化経路が複雑なこと,あるいは特異的な薬物リガンドが知られていないことなどの理由から,RACCを標的とした創薬開発は発展途上にあるといえる.また,数種のRACC拮抗薬が報告されてきたが,選択性の低さなどの大きな問題点を抱えてきた.最近になり選択的RACC阻害薬の一つとして,ピラゾール誘導体の開発がようやく報告された.本総説においては,ピラゾール誘導体がTRPCチャネルに直接作用することでRACC活性を阻害していること,およびその誘導体の一つがTRPC3サブタイプを選択的に阻害することを見出したことを中心に,TRP(RACC)を標的とする新規カルシウム拮抗薬の可能性について論じたい.これらの阻害薬は,まだ未解明な部分が多いTRPチャネルの生理機能解明に大きく貢献することが期待される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-11-01
著者
-
森 泰生
京都大学 大学院工学研究科合成・生物化学専攻分子生物化学分野
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森 泰生
京都大学大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 分子生物化学分野
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清中 茂樹
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻
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清中 茂樹
京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻 分子生物化学分野
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森 泰生
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻
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清中 茂樹
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻 地球環境学堂
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