インスリン抵抗性に伴う血管障害の分子機構の解明
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概要
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インスリン抵抗性状態は肥満,耐糖能異常,高インスリン血症,高血圧,脂質代謝異常に密接に関連し,虚血性心疾患や脳血管障害などの動脈硬化症の危険因子となることが大規模な疫学的研究により明らかにされており,その病態の解明が重要な臨床的課題となっている.インスリン抵抗性モデルラットの胸部大動脈を用いて各種の検討を行った結果,内皮プテリジン代謝異常に伴う内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性調節異常がその一因であることを見出した.eNOSの活性型補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)細胞内含量は生体内ではGTPシクロヒドラーゼI(GTP-CH1)を律速酵素とするde novo合成系によってその主な生成量が規定されると考えられている.インスリン抵抗性状態では血管内皮細胞でのインスリン作用の減弱に伴いGTP-CH1の遺伝子発現および酵素活性が低下すること,そしてその結果として組織BH4含量が減少することがeNOS由来のスーパーオキシドアニオン(O2 −)産生の増加とNO産生の低下をもたらすことを報告した.さらに,インスリン抵抗性ラットおよびマウスにおけるレニン·アンジオテンシン系の動態とアンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1)受容体の役割について検討した結果,インスリン抵抗性ラットの大動脈ではアンジオテンシンIIに対する過収縮が生じていること,血管内皮細胞ではNAD(P)Hオキシダーゼ由来のO2 −産生が増加していることが明らかになった.また,AT1a受容体の欠失マウスを用いた検討から,インスリン抵抗性状態ではAT1a受容体の過剰発現が生じることによりNAD(P)Hオキシダーゼが活性化され血管トーヌスが亢進することを報告した.以上のように,インスリン抵抗性状態における血管機能異常(血管トーヌス·酸化ストレスの亢進や血管内皮機能障害)の機序にeNOSアンカップリングおよびNAD(P)Hオキシダーゼの活性化によるO2 −産生増加が関与することが明らかとなった.
- 2005-05-01
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