質的変容における歴史性, 映像の諸問題
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概要
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本論は, 現在における技術的歴史的な基本的諸条件を確認してみるといった意図の基で書かれおり, その域を出るには至らない。情報テクノロジーとは何か, 我々はいかにしてそれから距離をとりえ, 情報テクノロジーの時代における芸術的実践はどのようにありえるのか等々, といった認識作業である。新たな技術による歴史的変容へのこうした意識は, 今日その規範的な先例として, ヴァルター・ベンヤミン『複製技術の時代における芸術作品』においてみてとることができるだろう。差し当たり本論はそのテクストに前提される視点を基礎とせざるを得ない。するとまず, 今日の情報テクノロジーはポスト「複製技術」として捉えられることになり, その質的差異が検討されることになる。そのことは他方で, ベンヤミンのテクストにおける様々な領域に渡る諸問題は今日のテクノロジーの達成によって解消されたわけではなく, 質的に変形され, 持ち越されてきていることを意味するだろう。技術的歴史的な諸条件とは, そのような視座を指し示している。
- 情報文化学会の論文