インスリン作用不足と酸化ストレス
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概要
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酸化ストレスは,老化や癌のみならず,生活習慣病の病態にも関与していることが明らかとなってきた.糖尿病においても酸化ストレス亢進が,糖尿病血管障害やインスリン作用に影響している.特に糖尿病血管障害に関しては,主として以下の4つの経路により亢進した酸化ストレスが,障害の進行に関与していると考えられる:1)ポリオール代謝亢進に伴う酸化ストレス,2)advanced glycation end products(AGEs)産生とAGEs受容体(RAGE),3)ミトコンドリア電子伝達系からのスーパーオキサイド産生増加,4)血管壁細胞におけるNAD(P)Hオキシダーゼ活性化.一方,糖尿病状態においては酸化ストレスに抗すべき酸化ストレス消去系の活性低下も生じる.8-epiprostaglandin F2α(8Epi)を酸化ストレスマーカーとして検討すると,糖尿病患者では酸化ストレスが亢進しているが,必ずしも血糖値の動きとは関連しておらず,高中性脂肪血症との関連性が示唆された.酸化ストレスは,血管障害のみならず,神経細胞においてもタンパク質の機能障害,細胞内輸送の障害,ひいてはアポトーシスを引き起こし,糖尿病性神経障害の病態に深くかかわっていることが明らかにされてきた. 酸化ストレスとは,「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ,前者に傾いた状態」と定義される.酸化ストレスは,タンパク質,脂質,DNA障害を介して,老化や癌,生活習慣病の病態に関与していると考えられている.インスリン作用が不足した状態である糖尿病においても酸化ストレスが種々の程度に亢進し,病態に影響していることが明らかにされてきた.特に糖尿病血管障害に関しては,酸化ストレス亢進により血管内皮細胞の機能障害,血栓形成やLDLの酸化変性を促進する一方,細胞内情報伝達系を修飾しサイトカイン,接着因子,増殖因子の発現を増強させて血管病変の進行を促進する.また最近では,酸化ストレスがインスリン抵抗性や膵β細胞からのインスリン分泌にも影響しうることが示されている.
- 2005-03-01
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