江戸時代のきもの資料に対する色彩分析の試み

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国立歴史民俗博物館の所蔵する"野村正治郎衣装コレクション"は,おもに江戸時代の公家や武家の女性が着用したきものから構成され,当時の染色技術の粋を集めたものとして,歴史的価値だけでなく,美術的,文化的価値も高い.しかし,きもののように,染色された繊維を基材とする資料は,劣化・退色が早い.劣化が進む前に,実物の資料を測色し分析したいと考えていたところ,同博物館の研究者の協力を得て,コレクションの一部を測色する機会を得た.まず,きもの資料の色彩を,1)カラーネミング法,2)視感測色,3)機械測色の3つの方法で記録した.さらに,得られた色彩情報をもとに資料の色彩傾向を分析し,次の結果を得た.・構成色をカラーネーミングによって分類した結果と,機械測色による測色値をNCSの形式的な領域分割に従って分類した結果は,よい一致を示した.・個々のをものの構成色では,Y(黄),O(橙),L(黄緑)の色相,s(暗清色), d(濁色)の色調を含むものが多い.T(青緑)はほとんど含まれない.・色相の組み合わせとしては,YOLという暖色系の組み合わせを含むものが多い.江戸時代のきものについては,文献調査による染色技術の面からの研究や,実物計測による形状の分析はあるが,色彩科学的な分析・研究はごくわずかしかない.実物の測色による色彩分析は,本報告によるものが初めてであると思われる.
日本色彩学会の論文
2004-12-01

江戸時代のきもの資料に対する色彩分析の試み

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