新規トリプタン, 安息香酸リザトリプタン(マクサルト^【○!R】)の片頭痛治療への導入
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概要
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リザトリプタン(化合物名は安息香酸リザトリプタン,商品名マクサルト)はセロトニン5-HT1B/1D受容体に対して強力かつ高い選択性を持つアゴニストである.今日の病態生理学によれば,片頭痛の発症には頭蓋内血管の拡張と三叉神経の活性化による種々の神経物質の遊離が主要な役割を果たしていると考えられている.硬膜血管では5-HT1B受容体は血管収縮に働き,三叉神経節では5-HT1D受容体は血管活動性神経ペプチドの遊離抑制に働くとされている.片頭痛治療におけるリザトリプタンの作用は5-HT1B/1D受容体へのアゴニスト活性によるものである.リザトリプタンは1998年から世界の多くの国で発売されたが,わが国では2003年に承認された新薬である.わが国での用量は10 mgであり,錠剤と口腔内崩壊錠(RPD錠:Rapidisc錠)が処方できる.後者は口内で唾液により速やかに崩壊するので,服用時に水などの液体を必要としない.片頭痛は発作時に嘔気を伴うことも多く,RPD錠は錠剤や水を嚥下しにくい状況下でも,口腔内で崩壊させて服用可能であり,外出時などの頭痛発作への対応が容易である.薬物動態学の上では,Tmaxはほぼ1時間であり,速やかな頭痛改善あるいは消失が得られる.生物学的利用率は45%,血漿タンパク結合率は約14%であり,標的受容体への高い親和性と相まって臨床的有効性の高さを裏付けている.また,動態は日本人試験と外国人試験でほとんど差はない.事実,特別な人種差を見ることなく服用後早い場合30分以内での頭痛改善あるいは消失が得られ,頭痛に伴う随伴症状の消失にも効果がみられている.リザトリプタンは頭痛再発に対しても高い有効性を維持し,服用回数を重ねても有効率は低下しない.主な副作用は傾眠,倦怠感,めまい,口渇,脱力,悪心,感覚減退などである.このようにリザトリプタンは有効かつ安全な片頭痛治療薬であり,本症状に悩まされる患者に有益な効果と日常生活の質の保証をもたらすものと考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2004-04-01