<原著>名乗らない女 : 謡曲『安達原』前シテの造形について
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概要
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『安達原』のシテ(主演者)像は『拾遺和歌集』平兼盛の和歌に依拠して造形されていると言われている.筆者は本曲の糸尽し歌に描かれた世界が『源氏物語』に深く関わるのではないかと考え,本曲の詞章のいくつかを『源氏物語』の文脈の中で比較検討してみた.その結果,前シテの現在は《須磨》の巻の,過去は《夕顔》と《葵》の巻の,いずれも六條御息所ではないかという結論に達した.《夕顔》と《葵》の巻で物の怪として現れる御息所は,本曲シテの本体である兼盛歌の鬼に通じると言える.『安達原』のシテ造形上の典拠として『拾遺和歌集』の兼盛歌以外に『源氏物語』を挙げることができるのでは,と考える.以上の考察に基づき,『安達原』の作者についても,一つの試みとして,それが世阿弥晩年の作品ではないかという推察を加えた.
- 順天堂大学の論文
- 2001-07-30
著者
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