マクロファージ・T リンパ球で作られるヒスタミン : 新しい刺激伝達因子
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
従来. ヒスタミンは肥満細胞や好塩基球に蓄えられていたものが, アレルゲン-IgE複合体の刺激により放出され, 喘息などのアレルギーの原因物質となるなど, 生体にとってマイナス因子として作用すると言われてきた, しかし, 我々は最近, ヒスタミンにはマクローファージ(Mφ)やTリンパ球によりヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の誘導を経てデノボに生成される経路もあり, さまざまな生命現象を調節し, 生体の恒常性を維持するためのプラス因子として働くことを明らかにした. まず, 生体内にある各種Mφ様細胞はエンドトキシンなどの刺激でヒスタミンを生成した. エンドトキシンで刺激された骨髄由来Mφによるヒスタミン生成はとくにGM-CSFおよびIL-3によって促進された. さらに脾臓Mφにより作られたヒスタミンはIL-1生成の促進による免疫反応の調節を, 骨髄Mφにより作られたヒスタミンはIL-6, M-CSF, G-CSFなどのサイトカイン類生成の調節による血球分化の制御を, さらに肝臓Mφであるクッパー細胞により作られたヒスタミンは肝細胞増殖因子の生成促進による傷害肝の再生と, 種々の生命現象の細胞間刺激伝達因子として働くことが明らかになった. 一方, ConAなどの免疫刺激を受けたCD4+およびCD8+Tリンパ球もHDC誘導性のヒスタミンを生成した. ConA刺激によるヒスタミン生成もやはりGM-CSFおよびIL-3によって特徴的に増強された. これらTリンパ球によって作られたヒスタミンはそれら細胞自身の増殖, 幼若化反応などの免疫反応を調節した. グラム陰性菌感染時にはMφとTリンパ球の協調により作られたヒスタミンは免疫反応を調節する一方, アレルギーなど過剰な免疫反応が起った場合は, 末梢器官と脳との間の臓器間刺激伝達因子として働き, 視床下部-脳下垂体-副腎皮質系を刺激してグルココルチコイドを分泌した. グルココルチコイドはMφおよびTリンパ球によるヒスタミン生成そのものを阻害するのを初め, 種々の免疫反応を抑制し, 生体をアレルギーによる傷害から保護するものと考えられた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2001-07-01
著者
関連論文
- 肝障害時におけるヒスタミン合成酵素誘導機構の解析 : 動物
- キノリン酸合成酵素のてんかんモデルマウスにおける発現 : 動物
- キノリン酸合成酵素cDNAクローニングとてんかんモデルマウス脳での発現 : 動物
- マクロファージ・T リンパ球で作られるヒスタミン : 新しい刺激伝達因子
- ストローマ細胞によるサイトカイン産生に及ぼすヒスタミンの効果 : 動物
- 骨髄マクロファージによるヒスタミン生成機構の解析 : 動物
- ヒスタミン再発見
- 生化学・栄養 大豆などの食品のたん白質が成体脳における神経幹細胞の増殖・分化に及ぼす機能の解析と脳疾患の再生医療に関する研究
- 代謝制御因子としての栄養素の機能に関する研究
- Amino Acid Nutrition