スギ花粉症患者における呼気NO,鼻腔NO および鼻ステロイド治療効果
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概要
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一酸化窒素 (NO) はL-アルギニンを基質としてNO合成酵素 (NOS) の作用により産生される. 呼気中に存在し, その大部分が上気道由来である. ステロイド吸入未治療の喘息患者やアレルギー性鼻炎患者において上昇し, さらに呼気NOはステロイド吸入治療により, 誘導型NOS (iNOS) の発現を抑制することによって減少することが報告されている.<BR>本研究の目的はスギ花粉症患者と健常成人の呼気NO, 鼻腔NOを測定し, 両群間に有意差がみられるか否か, また鼻用局所ステロイド薬治療により変化するかどうか比較し, 鼻腔で産生されるNOの役割とアレルギー性鼻炎への関与を検討することである.<BR>対象はスギ花粉症患者10名と健常成人5名である. 被検者は非喫煙者で最近2週間の間に呼吸器感染の既往のない者とした. 呼気NOは口呼吸, 鼻呼吸時の呼気を, 鼻腔NOは直接鼻腔孔からサンプルバッグに採取し, 化学発光式NO測定器ML9841を用いてNO濃度を測定した. 精度は1 part per billion (ppb) であった. 鼻用局所ステロイド薬投与は2週間とし, 投与後同様に測定した.<BR>スギ花粉症患者における鼻呼気NO, 鼻腔NO濃度は健常成人と比較し高かった (p<0.05). 口呼気NOは両群間に有意な差は見られなかった. スギ花粉症患者では鼻用局所ステロイド薬治療により鼻腔NO (p<0.01) と鼻呼気NO (p<0.05) は有意に減少した. 口呼気NOは変化しなかった. 健常成人では口呼気NO, 鼻呼気NO, 鼻腔NOとも不変であった.<BR>鼻腔で産生されるNOはスギ花粉症患者において増加し, ステロイドにより減少した. アレルギー性鼻炎患者の下鼻甲介粘膜においてiNOSが陽性であったことと併せて考慮すると増加した鼻腔NOはiNOS誘導により生成されていると考えられた. また血管拡張作用や血管透過性亢進により鼻閉, 鼻汁分泌を引き起こし, NOは鼻アレルギーの病態に関与していることが示唆された.
- 1999-12-20
著者
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