亜鉛錯体のマウス消化管からのエタノール吸収に対する阻害効果とその機構
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概要
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システイン亜鉛錯体(Cys-Zn)およびアセチルシステイン亜鉛錯体(AcCys-Zn)をマウスに経口投与し,エタノール吸収に対する阻害効果を検討した.マウスに,Cys-ZnおよびAcCys-Znを経口投与し,1時間後に<SUP>14</SUP>C-エタノールを経口または腹腔内投与した.<SUP>14</SUP>C-エタノール投与後20分から5時間まで経時的に尾静脈より採血を行い,<SUP>14</SUP>C-放射活性を測定した.Cys-ZnおよびAoCys-Zn投与群は,経口投与した<SUP>14</SUP>C-エタノールの血中への移行を顕著に阻害した.システインおよび亜鉛アセテートは,エタノールの吸収に影響を及ぼさなかった.一方,Cys-Zn投与群は,腹腔内投与したエタノールの血中への移行を抑制しなかった.Cys-Znを経口投与後,<SUP>14</SUP>C-エタノールを経口投与し,その後,1,3,7時間での<SUP>14</SUP>C-放射活性および亜鉛の臓器内分布を測定した.エタノール投与後,1,3,7時間いずれにおいても胃ではCys-Zn投与群は対照群に比べ有意に高い放射活性を示した.その他の臓器では対照群に比べ低値を示した.亜鉛は,Cys-Zn投与後,2,4,8時間まで胃腸内に多量に存在した.Cys-Zn投与後,<SUP>14</SUP>C-エタノールを経口投与し,投与後72時間まで経時的に尿および糞を採取し,<SUP>14</SUP>C-放射活性を測定した.尿および糞中の<SUP>14</SUP>C-放射活性は,投与した<SUP>14</SUP>C-放射活性に比べて低値を示し,それぞれ約5%および0.5%であった.<SUP>14</SUP>C-エタノールを経口投与し,投与後5時間まで経時的に呼気を捕集し,<SUP>14</SUP>C-放射活性を測定した.5時間後の呼気中の<SUP>14</SUP>C-放射活性の累積値は,投与した<SUP>14</SUP>C-放射活性に対し両群とも約28%であった.また,in vitroの実験において,Cys-Znは小腸でエタノールのアセトアルデヒドおよび酢酸への代謝を著しく促進した.以上,Cys-ZnおよびAcCys-Znはエタノールの吸収阻害剤として有用であることが示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 1998-05-01
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