「先生、お願い、このまま家で死なせてください」。一人の女性患者の言葉が藤井には忘れられない。 今から13年前の9月。父親が開業した藤井医院を継承して半年ほどたったある日のこと。父の代からかかりつけている82歳の女性患者の下腹部を触診中、藤井はピンポン玉大のしこりに気付いた。超音波検査でも腫瘍を認め、消化器癌のマーカーであるCEAも異常値を示した。