「自己責任」の時代--1991年の損失補てんを事例として
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概要
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本稿は「自己責任」についての考察として、特に1991年の新聞上の「自己責任」概念について焦点をあてて分析をおこない、次のことを明らかにした。第一に、1991年の新聞メディアにおいて、「自己責任」概念の使用頻度が上昇していることを確認した。そして、証券不祥事問題が、1991年に「自己責任」概念の使用増加の主な要因であると推測できることを示した。第二に、1991年の証券不祥事――証券会社の損失補てん――が、新聞メディアにおいて社会問題化する理由を整理した。1)1989年末に出された大蔵省通達が無視されていたこと。2)日本の経済のしくみにおいて、投資家および金融機関の自己責任原則が機能していないこと。3)証券会社が大口投資家に対してのみ損失補てんをおこなっていたことが、人びとの不公正感を喚起したこと。以上の三点を指摘した。第三に、新聞メディアの「自己責任」概念の使用法について確認し、次のことを示した。1)新聞メディアは「自己責任」概念を、「個人的な不公正感」を「社会的な不公正感」に転換する鍵概念として用いたのではなかろうか。2)新聞メディアは、「社会的な不公正感」を「自己責任の徹底」へ水路づけ(canalization)するために、「自己責任」概念を用いていたのではなかろうか。
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