月下美人。それは、夏の夜にだけ咲く神秘的な花である。純白の花弁は、夜半にかけて、静かに、ゆっくりと、力強く開く。 その存在ははかない。クジャクの尾羽のように艶やかな花は、夜明けを待たずに4時間ほどでしぼんでしまう。その後に残るのは、甘い、独特の香りだけである。夏の夜に、泡沫うたかたの夢を与える月下美人。その美しさとはかなさに魅せられる人は少なくない。