税務大学校所蔵奈良県公図の調査報告
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概要
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旧土地台帳附地図は公図と呼ばれ、その中心は明治前半期に調製された地籍図類やそれをもとに補訂・作成された図面である1)。また、地籍図と称される図には、一・般に明治前期に作製されたものと、第二次世界大戦後に作製されたものの二種類が存在する2)。本稿での地籍図とは前者を指すものとする。地籍図は,景観復原を研究方法の柱としてきた歴史地理学の発展によって,研究用史料としての意義を見い出され、多方面で用いられてきた3)。しかし、地籍図を史料として用いるのではなく、そのものを対象とした研究は、1980年代半ば以後の佐藤甚次郎による一連の研究4)によって本格化したといえよう。その結果、地籍図と通称しても、その内容や描写方法が多様であることや、安易に異府県の事例をもとに判断したり、それを一般化することの危険性が明らかとなってきた5)。それは、地籍図作成が中央集権国家を意図した明治政府最初期の事業の1つであること、廃藩置県以後の府県の揺藍期に当たること、鉄道や郵便・電信以外の近代交通・通信手段が基本的に未整備で情報伝達が限定的であったこと等を踏まえるならば、当然のこととして首肯できるであろう。そのため、地籍図研究では各県の事例を個別に検証することがまだまだ必要な段階にある。奈良県の地籍図は、県立奈良図書館や各自治体が所蔵するものと並んで、国税庁税務大学校租税史料館(埼玉県和光市在、以下税務大学校)に多数の図面が所蔵されていることが知られてきた。したがって、奈良県の地籍図解明において同校所蔵図の占める役割は大きい。また、同校の所蔵史料の中でも奈良県図面は所蔵点数が多く、かつ保存状態も比較的良好で、注目される存在となっている6)。しかし、その所蔵図面の内容や、さらにその考察はほとんど未着手の状況にある。そこで、本稿はその解明への一里塚として、同館所蔵の奈良県図面を粗分類すると同時に、特徴的と判断した数葉の図面について考察を加えた結果を報告することを目的としたい。
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