北海道および東北地方産サワオトギリの酵素多型
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概要
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サワオトギリHypericum pseudopetiolatum R. KELLERは, 北海道西南部(渡島半島)から九州中北部にかけての日本海側を中心とした地域に分布するオトギリソウ科の多年草である。本州以南では比較的普通に見られる本種であるが, 北海道では稀で, 標本を伴う確実な産地としては数例が知られるのみである。このたび桧山管内の2集団から計25個体の生植物を得たので, 北海道産サワオトギリの来歴を推定することを目的として, これら2集団におけるアイソザイム遺伝子 (ACN, MDH, 6PGD, PGI, PGM, SkDHの計16遺伝子) の遺伝的変異を調査し, 地理的に近い東北地方の集団の遺伝的変異と比較した。 その結果, 北海道の2集団は, (1)東北地方のいくつかの集団との間に, きわめて高い遺伝的近縁性(Nei's genetic identityの不偏推定値で0.96ないし0.97)を示すこと, (2)Mdh-4遺伝子座において, 東北地方の少数の集団からしか見出されていない特徴的な対立遺伝子(Mdh-4^<15>)に固定していること, が明らかになった。これらの結果から, 北海道にサワオトギリが分布しているのは, 比較的最近になってからの東北地方からの移住による分布域の拡大の結果である可能性が高いことが示唆される。
- 1988-12-01
著者
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