圧力を用いた高分子の相挙動と物性制御
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
圧力は圧縮により高分子の構造を直接変化させることで,熱を用いた場合とは異なる高分子の特性を引き出すことができる.近年ではさまざまな分野で圧力を積極的に利用した取り組みがなされており,その基礎的理解の必要性が高まっている.本報では圧力研究の例として,筆者らがこれまでに行ってきた高静水圧下における高分子水溶液の相挙動とCO2圧力下における高分子固体の物性制御を中心に紹介する.前者では,高分子水溶液の相分離やタンパク質の凝集,折りたたみなどをひき起こす疎水性相互作用の働きに着目し,高分子と水和水間の水素結合の働きが低下することで,疎水性相互作用の働きが低下することを明らかにした.また,共貧溶媒性を利用して高分子の水和状態を変化させることで,圧力–温度相図を容易に制御できることを明らかにした.後者では,CO2が結晶性高分子の非晶領域に選択的に含浸することを明らかにし,CO2の可塑化効果に由来した特異な融解挙動や延伸挙動などを見いだした.
- The Society of Polymer Science, Japanの論文