時間生物学的視点を考慮した遺伝毒性試験
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概要
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ヒトを含めたほとんどの哺乳動物の行動や生理的な変化は,約24時間を周期とした概日リズムを持っている。近年,この概日リズムに関連した生体反応の違いについて,時間薬理学や時間栄養学などの様々な分野で研究が行われ,臨床においては抗がん剤の時間治療も実施されている。安全性試験の分野では,ヒトでの安全性を評価するためにげっ歯類を用いた試験で得られた結果をヒトに外挿しているが,一般的な実験では,被験物質の投与や各種検査をマウスやラットなど夜行性動物の睡眠期にあたる明期に実施することが多い。一方,ヒトでは日中の活動期に種々の化学物質に曝露されることが多い。我々は,安全性試験における投与時刻の影響を検討する目的で,遺伝毒性試験の一つである小核試験を行った。明期(睡眠期)または暗期(活動期)に,変異原性を有するアルキル化剤であるN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)を8~9週齢の雄性C3Hマウスに腹腔内投与し,その後経時的に尾静脈から採血して末梢血中の小核誘発頻度を調べた。その結果,暗期の投与では明期の投与よりも小核誘発頻度が有意な高値を示した。この機序を解明するために,骨髄細胞におけるp53標的遺伝子(p21,cyclin G1,bax)の発現をリアルタイムPCRにより検討した。また,フローサイトメーターを用いて細胞周期(G0/G1,S,G2期)を測定した。その結果,明期,暗期のいずれの投与時期においてもp53標的遺伝子の発現がENU処置により誘導されることが確認され,cyclin G1およびbaxについては,明期の投与で暗期の投与よりも発現量が高値傾向を示した。細胞周期については明らかな変化は認められなかったが,現在,細胞周期に対する影響に関して詳細な検討を進めており,これらの結果についても報告する。
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