Diheptyl phthalate(DHP)のラット90日間混餌投与によって誘発された肝前がん病変における細胞周期とアポトーシス関連分子の発現解析
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概要
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【目的】Diheptyl phthalate(DHP)は,フタル酸エステルの一種で,di-2-ethylhexyl phthalate (DEHP)と同様に,塩化ビニル樹脂の可塑剤としてレザー,フィルム,雑貨及び塗料などに広く使用されている.我々はラットに対する26週間のDHP投与により肝臓に増殖性病変を誘発し,7日間の投与では肝臓の小核及び分裂中期細胞が増加することを見出した.また,90日間の反復投与により肝前がん病変の誘発と共に,Gadd45Gの発現低下とBcl-2の発現増加を見出し,アポトーシス抑制制御の関与が示唆された.本研究では,DHPにより誘発された肝前がん病変の形成に対するp53や細胞周期,アポトーシスに関連する分子の発現解析を行った.【方法】6週齢のF344ラットに最高濃度を20,000 ppmとして公比2で除し,対照群を含む5段階の用量でDHPを90日間混餌投与後に採取した肝臓を用いて,免疫組織学的解析を行った.【結果】5,000 ppm以上で,肝前がん病変のマーカーであるglutathione S-transferase placental form (GST-P)の陽性細胞巣の数及び面積が増加した.p53の下流分子のうちG1/Sチェックポイントに機能するp21Cip1は,陽性巣を形成し,逆にDNA修復に機能するGadd45A,B,GはGST-P陽性巣と一致して陰性巣を形成した.一方,細胞増殖関連因子であるPCNA,M期蛋白及び細胞増殖指標であるnuclear Cdc2,及びアポトーシスの指標であるTUNELと共にGST-P陽性巣外で巣内と比較して陽性細胞が増加した.【考察】前がん病変と考えられるGST-P陽性巣の外では,DHPによる肝細胞毒性に起因して,M期に停滞する細胞の増加やアポトーシスの亢進と共に再生性の細胞増殖活性の亢進が生じているものと考えられた.一方で,Gadd45蛋白質の発現を認めないGST-P陽性巣内では,DNA修復機序の破綻に応じてp21Cip1のG1/S期チェックポイント機能の亢進が生じ,G1/S期に停止する細胞の増加がみられ,これらのDHPによる肝発がん作用への関与が示唆された.
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