有機溶剤1-ブロモプロパンの胎生期曝露が若年期ラット海馬興奮性の非対称性に及ぼす影響についての検討
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概要
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【目的】ヒトでは左右の大脳半球についての機能的非対称性がよく知られているが,最近マウスの海馬についても左右の非対称性が存在すること,またこの非対称性が正常な記憶機能には欠かせないことが示唆されている。我々はこれまでに有機溶剤1-ブロモプロパン(1BP:CH3CH2CH2Br)の中枢神経毒性について評価を行っているが,本研究では若年期ラットの海馬における神経回路興奮性の非対称性について検討するとともに,これに対する1BP胎生期曝露の影響について検討した。【方法】11週齢の妊娠Wistar系ラットに対して妊娠初日から連続20日間(1日6時間)1BPを濃度700ppmで吸入曝露した。出産後得られた雄性仔ラットを胎生期曝露ラットとし,その2週齢および5週齢時に海馬スライス標本を作製し,左右それぞれの海馬体CA1領域での神経回路興奮性(刺激応答性)を集合スパイク電位(PS)および興奮性シナプス後場電位勾配(fEPSP slope)により解析した。【結果】fEPSP slopeについては,2週齢の対照群では左側海馬よりも右側海馬での値が大きかったが,1BP胎生期曝露群では左右差が認められなかった。一方,5週齢になると対照群では左右差が認められなくなったものの,胎生期曝露群では逆に左側海馬での値の方が大きい傾向が認められた。PSについては単一刺激で誘導した場合は対照群および胎生期曝露群とも2週齢,5週齢いずれも左右差が認められなかった。しかしながら連続刺激で誘導した場合のペアパルス比については,対照群では2週齢で左側>右側,5週齢では左側<右側の傾向が認められたが,胎生期曝露群ではいずれの週齢でも左右差は認められなかった。【考察】本研究から若年期のラット海馬神経回路興奮性にも週齢による非対称性が存在すること,また1BP胎生期曝露はその非対称性の出現にも影響を及ぼすことが示唆された。
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