一細胞質量分析技術を用いたミトコンドリアの機能評価に関する検討
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概要
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【目的】薬剤性肝障害の発症機序の一つとして,薬物又は薬物由来代謝物(以下代謝物)が有するミトコンドリアの機能障害が指摘されているが,ミトコンドリア機能障害を代謝物による作用を含めて定量的に評価するin vitroの実験系は確立されていない。まず我々は第1及び2相代謝能を有する初代培養肝細胞を用い,内因性代謝物の質的・量的変動を指標にミトコンドリアの機能評価が可能となるものと考えた。一方,初代培養細胞は調製ロット間で細胞の状態にばらつきも多く,また非実質細胞の混入も否定できない。そこで,顕微鏡下で細胞の形態を確認しながら,1細胞のみをナノスプレーチップに採取し,質量分析を行う技術(1細胞質量分析技術)を応用した。【方法】解糖系,TCAサイクル及びエネルギー代謝に関する内因性代謝物を測定対象化合物として,LTQ Orbitrap Velos (Thermo Fisher Scientific)でのイオン検出の確認と各分子に対するIon opticsの最適化を行った。次に,最適な分析条件を設定できた内因性代謝物を対象として,ラットの初代培養肝細胞から顕微鏡下で細胞内容物を吸引し,内因性代謝物の質的・量的変動を1細胞で検出することが可能かどうか検討を行った。さらに,既知のミトコンドリア機能障害を惹起することが知られる肝毒性物質を処理した後,1細胞における内因性代謝物の変動を解析した。【結果および考察】測定対象化合物の分析条件の最適化を行った上でラット初代培養肝細胞の1細胞の成分を分析したところ,内因性代謝物のピークを概ね検出することができた。さらにラット初代培養肝細胞に肝毒性物質を処理したところ,複数の内因性代謝物について明確な変動を確認することができた。以上より,1細胞質量分析技術がミトコンドリア機能評価に応用できる可能性が示唆された。
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