有機溶剤の中枢神経毒性評価のための<I>in vitro</I> 直接投与系の開発
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概要
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産業現場で使われる多くの有機溶剤には神経毒性が認められている.しかしながら,揮発性が高いために,in vitro 実験系で直接投与する方法では一定濃度を保つのが難しく,神経細胞レベルの毒性研究が困難とされてきた.本研究の目的は,一定濃度の有機溶剤を脳スライスへ直接投与できる系を確立することにある.フロン代替化学物質である1-ブロモプロパン(1-BP)は有機溶剤の中でも比較的揮発性が高く,従来のバブリング方法では,濃度を保ったまま直接曝露することは困難であった.そこで,気液平衡を応用して高濃度の酸素を1-BP灌流溶液に溶存させる方法を考案し,配管に有機溶剤の吸着が少ない材料を用いた装置を製作した.本装置を用いて1-BP濃度3.3 mMまたは10 mMを灌流し,インターフェース型スライスチャンバー内の灌流液1-BP濃度をガスクロマトグラフで測定したところ,30%程度の濃度損失はみとめられたものの,灌流開始約3分後から少なくとも測定した2時間後まで,2.2 mMまたは6.4 mMとそれぞれの濃度で一定に保つことができた.そこで,ラットの海馬スライスに3.3 mMまたは10 mMの1-BP溶液を5分間灌流し,1-BPを灌流せずに人工脳脊髄液を灌流した対照群の前期長期増強と比較すると,いずれの濃度でも,歯状回で誘導された前期長期増強をほぼ100%抑制し,CA1領域では約30%の抑制がみとめられた.いずれの領域においても1-BP投与でペアパルス促通が変化しなかったことから,1-BPによる前期長期増強の抑制はシナプス後の機序によることが示唆された.これらの結果から,1-BPが少なくとも海馬の前期長期増強を減弱することが判明した.本装置により,揮発性有機化合物による中枢神経毒性の評価のためのin vitiro実験系の一つを確立したと考える.
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