単層および多層カーボンナノチューブの生態毒性評価:水生生物に与える影響
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概要
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カーボンナノチューブ(CNT)が環境中へ放出された際の生態系への慢性的な影響を確認するため,OECD/WPMNスポンサーシッププログラム代表材料である3種のCNT[日機装単層CNT(N-SWCNT),スーパーグロース単層CNT(SG-SWCNT)および日機装多層CNT(N-MWCNT)]を被験物質に用いて,ミジンコ繁殖阻害試験および魚類延長毒性試験を実施した。各被験物質は,それぞれ凍結粉砕後,Tween80水溶液に分散させ,超音波処理と撹拌を行うことにより均一分散試験液を調製し,これを試験に供した。オオミジンコを用いた21日間繁殖阻害試験(OECD TG211に準拠)を行った結果,N-SWCNTおよびN-MWCNTは最高濃度0.3 mg/Lを含むすべての濃度区で初産日および平均累積産仔数に影響が見られなかったが,SG-SWCNTは最高濃度区1.0 mg/Lで平均累積産仔数の減少(繁殖阻害率36.6%)が認められた。以上からN-SWCNT,SG-SWCNTおよびN-MWCNTの無影響濃度NOECはそれぞれ,0.3 mg/L,0.32 mg/Lおよび0.3 mg/Lと算出された。続いて,ヒメダカを用いた2週間延長毒性試験(OECD TG304に準拠)を行った結果,N-SWCNTおよびSG-SWCNTは被験物質0.1-10 mg/Lのすべての濃度区において供試魚の死亡,外観および摂餌異常は認められず,体長・体重増加にも濃度依存的な有意差はなかった。一方,N-MWCNTは10 mg/L濃度区でのみ暴露2日目に1/10例の死亡が確認されたが,すべての試験区における生存魚の一般状態および体長・体重増加に対照群と比べて有意な差は見られなかった。また暴露終了後の供試魚について病理組織学的検査を行った結果,被験物質によらず0.32 mg/L濃度区以上でえら腔内に細繊維状物質が確認されたが,魚体内の組織から被験物質に由来する変化および被験物質の侵入は観察されなかった。以上からN-SWCNT,SG-SWCNTおよびN-MWCNTの無影響濃度NOECはそれぞれ,10 mg/L,10 mg/Lおよび3.2 mg/Lと算出された。(本研究はNEDO委託研究「低炭素社会を実現する革新的なカーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」(P10024)による成果である)
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